機能障害の成因(2)神経制御不全


徒手医学と機能障害-知っておきたい基礎知識4

【機能障害の成因】神経制御不全

もうひとつは、神経制御の問題もやっぱりある。

神経制御がうまくいっていない。たとえば麻痺ということを考えてみる。これは高次であっても末梢であっても、その効果器である筋肉たちを上手にコントロールすることはできない。身体中を調べてみると、不全麻痺と思われるような問題というのはあちこちに出てくる。筋出力的には、本来その目的の運動をするのに十分あるはずなのに、一部分の力が抜けてしまう。それの原因を追いかけていったら脊柱の機能障害だったというのもよくある。その場合には、関節部の制限をしっかり取ってあげることで神経機能がまた戻ってくることもある。そうすると、力がしっかり入るということもある。そんなケースもある。

また、正しい動き、正しいというのはなんだというと、効率的な運動、ということになる。例えばこれ(手元のペットボトル)をパッと持ち上げるのにこうやって(遠くから手を伸ばしながら)取るのは非効率。エネルギーがいっぱい必要。パッと持ち上げるのに、ペットボトルにスッと寄って持ち上げるのが一番少ない力で持ち上げることができる。それが効率的という意味。関節にも無理がかからないような動き、ということになる。

そういう正しい動きを学べなかったケースもある。たとえば野球部の男の子が、ボールが飛んできて腰を落としてしゃがんで取る、こういうケースがいわゆる正しい動き。ではそれをしないとどうなるかというと、足を折りたたまないで腰を曲げてボールを取ることに慣れている、そういう子もいる。成長期なんかはそうなりやすい。なぜかというと骨だけ先に伸びるから周りの筋肉が相対的に短くなると、足の曲げ伸ばし・折りたたむのが非常に窮屈になる時期がある。

そんな時期に、まだ動きがある腰辺り、脊柱辺りを曲げて代償していると、過剰な運動を、股関節みたいに大きな関節ではなくこんなに小さな関節にいっぱいさせることになるから、弛んで丸まりやすくなってしまう。その状態でスローイングのように体をねじりながら投げ返すと、丸めてねじる、という椎間板の生理にとっては一番壊れやすい動きをくり返されればじきに腰を痛めてしまうということがある。

正しくない動き、非効率的な運動を学習してしまったせいでケガをしてしまうという結果にもなる。それを意識的に変えられるかというと、これはたしかに神経制御だから、腰を丸めないように動きましょうというところで変えていくしかない。

ヨーイドンで動こうとすると、やわらかくなった腰骨からやっぱり動き始めてしまう。僕らの身体も物質でできているので、物質の特性というのはやわらかいところから運動が起きやすいという特性がある。地震を考えてみても、圧力をかけられると亀裂が入っている断層からバリッと割れる。ほかの部分も同じ物質でできていても、その中で切れ目が入っている、要は脆弱性を持っているところから動きが生じるという現象は僕らの身体にもあるということになる。

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