効果は手技では決まらない

治療法のセミナーをしていると「このテクニックであれば何日間痛みを止められるのか?」といった質問を受けることがあります。回答となるかは定かではありませんが、私は「テクニックそのものが痛みを消す力を持つものではない」と考えています。

そもそも痛みというものは、日常で頻回に取られる姿勢や動作によって癖付いた筋膜などによって力学的な負荷の偏在が生じたり、関節する骨同士の回転中心が狂うなどの異常運動が生じて過負荷にさらされた組織に損傷を生じたり、過緊張に陥って循環障害をきたしたりするなどの経緯で発せられます(もちろん他にも痛みが生じるシチュエーションはあるでしょう)。

それゆえに、痛みを止めるには傷害局所への負担を除くために、局所を含む全体の機能を正常化すること(力学的負荷の最適な分配ができる状態を導き出すこと)が大前提となるのです。

つまり、私たちの行う治療とは「傷つき痛む環境を正す」ということが主眼となるのです。力学的な負荷が正しく分配されるならば、組織は正常な修復の過程を進むことができ、また、正常な成長を遂げることもできます。

治療の成否は治療手技では決まりません。大事なのは問題を読み解く思考力です。もちろん技もなければなりませんが、それは専門家として備えているというのが前提です。

適切な評価を下すためには「徒手医学とは何か」という基礎を理解することが必要です。徒手療法の守備範囲を「機能障害」というキーワードで紹介している動画を紹介します。機能障害とは何か、どのように対処していくかを学べる内容となっています。手技療法の世界に飛び込もうとしている初学者をはじめ、ベテランの方にも主体的な治療を構築するための土台となるでしょう。

【動画】

(文責:非営利型一般社団法人徒手医療協会 代表理事古川容司)